腺様囊胞癌 Adenoid cystic carcinoma

唾液腺の病変

解説

篩状、腺管状、充実性胞巣をなして浸潤性・破壊性増殖をする上皮性悪性腫瘍である。

導管上皮細胞(腺上皮細胞)と腫瘍性筋上皮細胞からなる2相性腺管構造を認める。

臨床事項

  • 30~50歳代に好発し、女性に多い。
  • 約半数は耳下腺、顎下腺に発生、小唾液腺では口蓋腺に好発する。
  • 再発や遠隔(肺)転移が生じやすい。

病理組織所見

  • 篩状、腺管状、充実性胞巣からなる。
  • 異型性に乏しい導管上皮細胞(腺上皮細胞)と腫瘍性筋上皮細胞からなる2相性腺管構造がみられる。
  • 硝子化を伴う線維性結合組織の間質がみられる。
  • 周囲組織への浸潤性・破壊性増殖が認められる。
  • 神経線維周囲への浸潤がみられる。
  • 肺への血行性遠隔転移が認められる。

その他

  • 粘表皮癌と共に頻度が高い。
  • MYB-NFIB 融合遺伝子が報告されている。

鑑別疾患

  • 多形腺腫
  • 筋上皮腫
  • 基底細胞腺腫
  • 基底細胞腺癌
  • 上皮筋上皮癌
  • 筋上皮癌

代表画像

腺様囊胞癌

口蓋に腫瘤が認められる。

腺様囊胞癌(弱拡大)

篩状構造を呈する腫瘍胞巣が認められる。

篩状構造

  • ガイド無し
  • ガイド有り

好酸性細胞質を有する腺上皮細胞が管腔を裏装し、腫瘍性筋上皮細胞からなる少数の真の腺腔(2相性腺管)、腫瘍性筋上皮細胞で囲まれた偽囊胞腔が認められる。

好酸性細胞質を有する腺上皮が管腔を裏装し、腫瘍性筋上皮細胞からなる少数の真の腺腔(2相性腺管)(黄矢印)、腫瘍性筋上皮細胞で囲まれた偽囊胞腔(白矢印)が認められる。

2相性腺管構造

  • ガイド無し
  • ガイド有り

好酸性細胞質からなる腺上皮細胞が管腔を裏装し、腫瘍性筋上皮細胞が外層に認められる。

好酸性細胞質からなる腺上皮細胞(黄矢印)が管腔を裏装し、腫瘍性筋上皮細胞(白矢印)が外層に認められる。

神経周囲浸潤

  • ガイド無し
  • ガイド有り

腫瘍胞巣の末梢神経周囲への浸潤が認められる。

腫瘍胞巣の末梢神経周囲への浸潤が認められる。

  • ガイド無し
  • ガイド有り

腫瘍細胞の末梢神経周囲および内部への浸潤、増殖がみられる。

浸潤した腫瘍組織内にも腺管状構造が認められる。

腫瘍細胞の末梢神経(N)周囲(白矢印)および内部(黄矢印)への浸潤、増殖がみられる。

浸潤した腫瘍組織内にも腺管状構造が認められる。

充実型

  • ガイド無し
  • ガイド有り

腫瘍胞巣の大部分は基底細胞様細胞からなり、一部に小導管様構造が認められる。

胞巣の中心部にコメド壊死巣が認められる。

腫瘍胞巣の大部分は基底細胞様細胞からなり、一部に小導管様構造(矢印)が認められる。

胞巣の中心部にコメド壊死巣(★)が認められる。