術後性上顎囊胞 Postoperative maxillary cyst

囊胞

解説

上顎洞炎の根治手術の後に、十数年を経て上顎洞に生じる囊胞である。

臨床事項

  • 上顎洞根治手術の既往がある。
  • 上顎臼歯頬側歯肉、歯肉頬移行部の腫脹を認める。
  • 歯痛、歯の違和感を認める。
  • 圧痛、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、頭重感、眼球突出を認める。
  • 暗赤色調の漿液性、膿性の内容液を認める。
  • 上顎洞内X線不透過像を認める。

病理組織所見

  • 囊胞壁は瘢痕化を伴う線維組織からなり、種々の程度に炎症性細胞浸潤がみられる。
  • 立方上皮、線毛上皮あるいは化生性の扁平上皮により裏装されるが、しばしば萎縮あるいは消失する。

代表画像

パノラマX線画像

上顎左側臼歯部に単房性透過像が見られ、上顎洞底線は消失する。

術後性上顎囊胞(弱拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

瘢痕化を伴う緻密な線維組織からなる囊胞壁で、囊胞腔は上皮に裏装されている部分が多くみられ、上皮下には慢性炎症性細胞浸潤が認められる。

瘢痕化を伴う緻密な線維組織からなる囊胞壁で、囊胞腔(破線)は上皮に裏装されている部分が多くみられ、上皮下には慢性炎症性細胞浸潤が認められる。

術後性上顎囊胞(強拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

上:裏装上皮は多列円柱線毛上皮からなり、上皮下には慢性炎症性細胞浸潤がみられる。

下:瘢痕化している部の裏装上皮は萎縮し、単層上皮様を呈する。

上:裏装上皮は多列円柱線毛上皮からなり、上皮下には慢性炎症性細胞浸潤がみられる。

下:瘢痕化している部(★)の裏装上皮は萎縮し、単層上皮様を呈する(矢印)。

術後性上顎囊胞(弱拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

囊胞壁は緻密な線維性結合組織からなり、囊胞腔側に帯状の硝子化した瘢痕組織がみられる。裏装上皮は消失している。

囊胞壁は緻密な線維性結合組織からなり、囊胞腔側に帯状の硝子化した瘢痕組織(破線)がみられる。裏装上皮は消失している。