口腔扁平苔癬 Oral lichen planus

口腔粘膜疾患

解説

口腔粘膜の角化異常を伴った原因不明の慢性炎症性病変である。

白色の網状、線状、環状、丘状の病変や周囲に紅斑、びらんを伴う病変がある。

臨床事項

  • 中年以降の女性に好発する。
  • 両側の頬粘膜に好発する。
  • 慢性的に経過し、接触痛や刺激痛などを認める。
  • 粘膜は白色の線状、網目状、レース状、環状、丘疹状を呈するもの、発赤、びらんを伴うものがある。
  • ときに水疱形成を伴う。
  • 肉眼的特徴から、網状型、びらん型、白斑型、丘疹型、紅斑型、水疱型などに分類される。

病理組織所見

  • 棘細胞層の肥厚や表層の錯角化亢進がみられる。
  • 顆粒層の出現(頬粘膜など裏装上皮)がみられる。
  • 上皮直下の粘膜固有層には帯状のリンパ球浸潤がみられ、上皮脚は鋸歯状を呈する。
  • 基底細胞層に融解変性(液化変性)が生じ、その結果、粘膜上皮と粘膜固有層との間が剥離する(セパレーション、Max Joseph spaces)。
  • コロイド小体(硝子様小体、Civatte体)がみられる。

鑑別疾患

苔癬様異形成、苔癬様病変(苔癬様口内炎)(Oral lichenoid drug reaction、Oral lichenoid contact lesionなど)、白板症、他の水疱性疾患

代表画像

典型的な頬粘膜病変

  • ガイド無し
  • ガイド有り

白色レース様の病変がみられる。

なお、反対側の頬粘膜にも同様の所見が認められる。

白色レース様の病変(矢印)がみられる。

なお、反対側の頬粘膜にも同様の所見が認められる。

扁平苔癬(弱拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

頬粘膜上皮には錯角化亢進、鋸歯状の上皮脚および上皮下の帯状のリンパ球浸潤が認められる。

頬粘膜上皮には錯角化亢進(黄矢印)、鋸歯状の上皮脚(白矢印)および上皮下の帯状のリンパ球浸潤(黒破線)が認められる。

上皮基底面

上皮基底面は平坦化がみられる例で、上皮下の帯状リンパ球浸潤は典型例と同様に認められる。

上皮基底細胞層

  • ガイド無し
  • ガイド有り

上皮基底細胞層内へのリンパ球浸潤と融解変性が認められる。

上皮基底細胞層内へのリンパ球浸潤と融解変性(矢印)が認められる。

Max Joseph spaces(セパレーション)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

リンパ球浸潤により基底膜部に液化変性が進むと上皮は粘膜固有層から剥離する。

リンパ球浸潤により基底膜部に液化変性が進むと上皮は粘膜固有層から剥離する(矢印)。