類天疱瘡 Bullous pemphigoid

口腔粘膜疾患

解説

皮膚・粘膜の表皮下・上皮下に水疱形成が生じる自己免疫性疾患で、口腔粘膜では(良性)粘膜類天疱瘡が多い。

臨床事項

  • 頬粘膜、歯肉、口蓋粘膜や舌背に好発する。
  • 中年以降の女性に好発する。
  • 水疱は破裂し、潰瘍を生じる。

病理組織所見

  • 粘膜上皮が基底細胞直下で粘膜固有層の結合組織から剥離し、水疱(上皮下水疱)が形成される。
  • 棘融解はみられない。
  • Tzanck細胞はみられない。
  • 基底膜と基底層細胞間にIgG沈着がみられる。

その他

  • 自己抗原は上皮基底細胞と基底膜を結合するヘミデスモゾームに存在する。
  • 自己抗原は皮膚類天疱瘡ではBP180(XVII型コラーゲン)とBP230(デスモコリン)、粘膜類天疱瘡ではBP180とラミニン332が挙げられる。

鑑別疾患

他の水疱性疾患

代表画像

歯肉の病変

  • ガイド無し
  • ガイド有り

水疱形成と破裂後の潰瘍がみられる。

水疱形成(矢印)と破裂後の潰瘍がみられる。

口唇粘膜の病変

  • ガイド無し
  • ガイド有り

水疱形成がみられる。

水疱形成(矢印)がみられる。

下顎歯肉頬移行部の病変(両側のうち左側)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

水疱は破れ、潰瘍がみられる。

水疱(矢印)は破れ、潰瘍がみられる。

下顎歯肉頬移行部の病変(両側のうち右側)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

水疱は破れ、潰瘍がみられる。

水疱(矢印)は破れ、潰瘍がみられる。

皮膚の表皮下水疱

  • ガイド無し
  • ガイド有り

表皮は基底細胞直下で剥離し、水疱形成がみられる。

表皮は基底細胞直下で剥離し、水疱形成(★)がみられる。

口腔粘膜の上皮下水疱(弱拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

上皮は基底細胞直下で粘膜固有層の結合組織から剥離し、水疱形成がみられる。

上皮は基底細胞直下で粘膜固有層の結合組織から剥離し、水疱形成(★)がみられる。

口腔粘膜の上皮下水疱(強拡大)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

基底細胞層や棘細胞層の破壊は認めず、上皮は基底細胞直下で剥離するため、棘融解やTzanck細胞はみられない。

基底細胞層(破線)や棘細胞層の破壊は認めず、上皮は基底細胞直下で剥離するため、棘融解やTzanck細胞はみられない。

IgG蛍光免疫染色

基底膜に沿って自己抗体(IgG)の沈着(緑色蛍光)がみられる。

IgG免疫染色

上皮基底膜部は線状にIgG陽性を示す。