学会について

ご挨拶

この度、理事長を拝命致しました豊澤悟(とよさわさとる)です。任期は令和4年度から5年度の2年間になりますが、就任にあたり本学会の紹介を兼ねてご挨拶申し上げます。

日本臨床口腔病理学会は、口腔(こうくう)領域の病気を対象に、病気の成り立ちを解明して、その成果を生かして、病理診断を通して歯科医療に貢献し、研究を通して生命科学の発展に寄与する学問分野です。

口腔は、食物の入り口であり、消化・吸収のファーストステップである噛む・飲む機能に加えて、発声や呼吸にも関わり、口腔がんなどの病気による口腔の機能障害はQOL(Quality of Life)を著しく低下させます。そのため、口腔領域に発生した病気では早期発見による早期治療が望まれます。その口腔領域には、齲蝕(虫歯)と歯周病以外に、粘膜、顎骨、唾液腺等に良性・悪性腫瘍を含めた多種多様の病気が発生しますが、他の臓器領域と異なり、目で直視できるものや触診できるものが多く、検査により早期発見が容易な臓器といえます。早期発見・早期治療に病理診断は不可欠であり、病変から採取した組織を顕微鏡観察して、病名を確定し、病気の進行程度を診断して、その結果に基づいて治療が行われます。また、採取した組織の蛋白・ゲノム解析に基づいた診断・治療も現実のものとなってきました。このように、本学会は、口腔領域の病気の治療に不可欠な病理診断の向上のため、症例検討や学術活動を通して口腔病理学の理解を深め、口腔領域の病気に関連して教育や研究を推進・支援して、口腔病理学の発展を通じて社会に寄与することを目指しています。
本学会では、毎年、学術集会と病理診断講習会を開催しています。また、関連学会とともに英文機関誌J Oral Maxillofac Surg Med Pathol (JOMSMP) の発刊を行い、学会ホームページからは教育コンテンツとして「口腔病理基本画像アトラス」を公開し、口腔病理学の情報発信や教育支援を行っています。さらに、本学会会員は、日本頭頸部癌学会や日本口腔腫瘍学会が出版する頭頸部癌取扱い規約や口腔癌取扱い規約の改定・編集に参画している他、WHO頭頸部腫瘍分類の編集や執筆者としても活動しています。

今後も、本学会の従来の方向性は継続しながら、以下の目標に取り組みます。

  1. 口腔がんの早期発見・早期治療に果たす病理診断の必要性を示し、口腔がん検診を啓発する
  2. 口腔領域の各疾患について、病理診断の標準化を図っていく
  3. 会員への病理教育と診断支援のため、また社会への発信強化のため、ICT利活用を推進する
  4. 次世代の口腔病理医の人材育成に向けた病理教育を、関連学会と連携して実施していく

会員の皆様とともに、本学会の発展のために取り組んで参りたいと思いますので、本学会へのご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

NPO法人日本臨床口腔病理学会 理事長 豊澤 悟

歴代理事長 ご挨拶